経済学賞(1969年 受賞)
【経歴】
1903年4月12日オランダのハーグに生まれる。ライデン大学で物理学を学ぶが、経済学に転じる。29年博士号取得、オランダ政府中央統計局に勤務、33年ロッテルダム経済大学講師に就任。経済学の計量化を研究。36年国際連盟の景気循環研究委員。45年オランダ政府中央経済計画局長官。55年オランダ経済研究所所長。60年来日し研究指導(経済企画庁と外務省の招きに応じて)。67年エラスムス賞受賞。68年国際連合開発計画委員会の初代委員長に就任。69年に第1回ノーベル経済学賞受賞。73年ライデン大学教授。94年7月9日(享年91歳)。
【受賞理由となった業績や活動】
★〔受賞理由〕
「計量経済学の発展に寄与した貢献」に対して、1969年ノーベル経済学賞受賞。
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★〔その業績や活動〕
ジャン・ティンバーゲンは最初、大学で物理学を学んでいたが、そのうちに社会問題に関心をもつようになり、やがて経済学に転向。この経済学で成果をあげた人物である。
1929年にライデン大学で博士号を取得した後、ロッテルダム経済大学の講師に就任し、経済学の研究を本格的にはじめた。ティンバーゲンの研究テーマは「経済学の計量化」だった。
彼は、アメリカ経済の景気変動を、消費関数や投資関数などの方程式群から成るモデルを用いて、その計量分析を試みたのである。そうした、計量分析を用いた経済学のことを「計量経済学」と呼んでいる。
ティンバーゲンは、計量経済学がまだ初期の段階にあった1930年代から、すでに幾つかの専門書も出版している。
「景気循環の問題に対する計量経済学的接近(An Econometric Approach to Business Cycle Problems)」(37年)、「景気循環理論の統計的検証(Statistical Testing of Business Cycle Theories)」(39年)などだ。
ティンバーゲンは、計量的手法を経済政策に適用したり、また他にも「経済開発の問題」や「所得分配論」などの研究に取り組んだりもしていた。
そうした研究をまとめた「経済政策の理論」を52年に出版。これによって、計量経済モデルを政策問題の解決に応用するための方法を体系化したのである。
この中で「ティンバーゲンの定理」と呼ばれるものも提示した。これは、「ある政策目標を同時に達成するためには、その目標の数と少なくとも同数の政策手段が必要である」というもの。
50年代後半になると、インドやエジプトから招かれて経済開発の指導にも携わる。そのときの経験をもとに、58年には「経済開発の設計」を出版。
60年には、日本の経済企画庁や外務省からも招かれて、研究指導をおこなっている。
こうした、彼の計量経済学に関する貢献に対して、1969年、第1回のノーベル経済学賞が贈られたのである。
受賞後も、「所得分配論」(75年)、それに計量経済学の入門書である「計量経済学」(49年)、また「世界の安全と公正(World Security and Equity)」(90年)などを出版している。
ちなみに、彼の名前を母国のオランダ語で読むと、「ヤン・ティンベルヘン」となる。
また彼は、既述したように、ライデン大学で物理学を学んでいたのだが、なんとあのアインシュタインからも期待されていたほど、そちらの分野でも業績をあげていたらしい。
さらに、彼の弟であるニコラス・ティンバーゲンは、1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、有名な動物行動学者であったのだ。
★〔「これだけは!」キーワード〕
【ティンバーゲンの定理】
「政策目標がn個存在するとき、そのn個の目標を同時に達成するためには、独立な政策手段もまた同数のn個が必要である」という定理〔「経済政策の理論」(52年)より〕。
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