「サイモン, H. A.(1916~85)」(アメリカの経済学者)

経済学賞(1978年 受賞)

【経歴】

1916年6月15日アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーに生まれる。36年シカゴ大学卒業、同大学研究員。39年カリフォルニア大学行政研究所研究員。42年イリノイ工科大学助教授。43年政治学博士号(シカゴ大学)取得。47年イリノイ工科大学教授。49年カーネギー・メロン大学教授。69年特別科学貢献賞受賞。75年A.M.チューリング賞受賞。78年ノーベル経済学賞受賞。2001年2月9日死去(享年84歳)。

【受賞理由となった業績や活動】

★〔受賞理由〕

「経済組織内における意思決定過程に関する一連の研究」に対して、1978年ノーベル経済学賞受賞。

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★〔その業績や活動〕

ハーバート・A・サイモンは、企業活動にとって、最も重要なことは「意思の決定」にこそあると言った。「経営とは意思決定である」というわけだ。

そこで、彼は「意思決定はどのように為されるのか」について、研究したのである(「経営行動」1945年出版)。

そして、人間が意思決定する際、その決定をおこなうための知識、予測などはいずれも不完全である、と考えた。たとえ、豊富な資料やデータが蓄積されていても、である。

ということは、「完璧な意思決定ができる経営者は存在しない」ということになる。このように、サイモンは人間の合理的行動には、限界があることを指摘。

そこで、意思決定に完璧を求めるのではなく、意思決定の合理性を高めること、または意思決定における「満足化行動」(ある程度満足できるところでの意思決定)にこそ、意義があることを説いた。これは「経営人モデル」とも呼ばれている。

それまでは、「完全合理性」をもつ経営者がモデルとして想定されていた。他方、社会心理学などで扱われている人間関係論では、感情モデルに基づいた、まったく「非合理な人間」が想定されてきた。

サイモンはこういった両極端の考えを払拭し、合理性には限界があるものとして、でも目標としては合理的に行動しようと意識する、そうした「経営人モデル」を想定し、その考えに基づく組織論を展開した、というわけである。

57年に出版した「人間行動のモデル」(13の学術誌に発表した16編の論文を収録したもの)の中の論文は、経済学や経営学、それに心理学など、広い領域に渡っている。

こうした、幅広い人間行動モデルの研究を通して、彼は組織の中における人間の合理的行動、および非合理的行動を包括的に説明できる理論を構築しようとしていたのだ。

さらに、「人間の合理性には限界がある」とする考えを、経済理論や心理学の分野にまで応用していった。

1978年、この意思決定過程に関する一連の研究に対して、ノーベル経済学賞が贈られた。

その後、コンピューターの発展とともに、彼の研究もコンピューターにおける意思決定分析について、シフトしていったようだ。

しかし、やはりどんな優秀なコンピューターを駆使しても、完璧な意思決定はできないのだろう。コンピューターも結局は、人間によってプログラムされたものだからである。

★〔「これだけは!」○×クイズ〕

1.「サイモンは、企業活動にとって最も重要なことは『意志の決定』であると説いた」

2.「人間の合理的行動には、限界がある」

3.「豊富な資料や信頼できるデータさえあれば、完璧な予測は可能となる」

答え:1.「○」、2.「○」、3.「×」

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