■物理学賞(1983年 受賞)
【経歴】
1910年10月9日インドのラホール(現在パキスタン領)に生まれる。マドラス大学のプレジデンシー・カレッジ卒業後、ケンブリッジのトリニティ・カレッジで研究に専念。33年博士号取得。38年ヤースキー天文台助教授。44年理論天文学教授。52年天文学および物理学特別教授。52年~71年『天体力学雑誌(Astrophysical Journal)』誌の編集長。83年ノーベル物理学賞受賞。95年8月21日死去(享年84歳)。
【受賞理由となった業績や活動】
★〔受賞理由〕
「星の進化、構造を知るうえで重要な物理的過程の研究」により、1983年ノーベル物理学賞受賞。
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★〔その業績や活動〕
1983年にノーベル物理学賞を受賞した、インド生まれのアメリカ人・天体物理学者チャンドラセカールは、星の構造や進化の研究で有名。
この分野の研究で数々の業績をあげており、「チャンドラセカールの限界」という天文用語の名前にもなっているほどだ。
その「チャンドラセカールの限界」とは、何の限界のことなのか?それは「白色矮星になる限界」(質量臨界量)のことをいう。
で、その「白色矮星」とは?「白色矮星」とは、地球ほどの大きさだが、それよりもずっと質量が大きく、また高密度である、一種の恒星のことである。
この、地球程度の大きさで、太陽程度の質量をもつ白色矮星は、もともとは太陽のような恒星であったものだ。それが、もはや核融合によるエネルギー生成も止まり、ただ内部に残っている熱エネルギーだけで光っている、そんな状態だ。
いわば、太陽(恒星)の年老いた姿ともいえよう。ただし、すべての恒星が年をとると、白色矮星になるというわけではない。将来の姿は質量で決まるのだ。
太陽の質量の「約1.4倍」以上の重たい恒星では、「超新星爆発」とよばれるものを起こし、それよりも軽いと、地球程度の大きさの白色矮星になる、というわけである。白色矮星になるには、その質量に上限があるということだ。
というしだいで、その「太陽質量の約1.4倍」というのが、「チャンドラセカールの限界」ということになる。
★〔微視的な世界を知って、巨視的な世界を探る!〕
チャンドラセカールは、白色矮星をはじめ、中性子星や赤色巨星など、恒星の進化と構造について、それをミクロの世界の量子力学的現象と絡めながら研究を進めていった。衰弱した星の内部では、原子構造が巨大な重力に押し潰され、密度が増し、やがて縮退していく。それを計算で示し、理論化することに成功。
ミクロの世界の原子や電子などの「量子力学的」知識が、恒星のようなマクロの世界の研究にも活かされている、よい例だと言える。
★〔「これだけは!」○×クイズ〕
次の設問に、「○か×か」で答えよ。
1.「太陽の質量の『約1.4倍』以上の重たい恒星では、『超新星爆発』とよばれるものを起こす」
2.「太陽の質量の『約1.4倍』よりも軽い恒星では、地球程度の大きさの『白色矮星』になるといわれる」
3.「チャンドラセカールは、星の構造や進化の研究で有名な、ロシア生まれのアメリカ人・天体物理学者だった」
答え:1.「○」、2.「○」、3.「×」
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