「チェレンコフ, P. A.(1904~90)」(旧ソ連の物理学者)

■物理学賞(1958年 受賞)

【経歴】

1904年7月28日ヴァロネズ(ボロネジ)郡に生まれる。28年ヴァロネズ大学理学部(物理数学部)卒業。30年~35年ソ連科学アカデミー・レーベデフ物理学研究所上級研究員。36年同研究所教授。40年物理数学博士。53年実験物理学の大学上級教授。58年ノーベル物理学賞受賞。59年レーベデフ物理数学研究所光・中間子反応研究室長。90年1月6日死去(享年86歳)。

【受賞理由となった業績や活動】

★〔受賞理由〕

「チェレンコフ放射(効果)の発見」により、1958年ノーベル物理学賞受賞。

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★〔その業績や活動〕

どこか神秘的にも映る、ボーッとした青白い光・・・。「チェレンコフ放射」による光(チェレンコフ光)とは、そんな光である。原子炉から発せられる、あの青白い光も、やはりそれなのだ。

この神秘的な放射(光)を発見し、「チェレンコフ効果」の理論をつくった人、そして、それによりノーベル物理学賞を受賞した人が、旧ソ連の物理学者であったパベル・チェレンコフ、その人なのである。発見は1934年のことだった。

「チェレンコフ光」は、電子や陽電子など荷電粒子(電荷を帯びた粒子)が、水中などの媒質中を光速に近い速度で通過するときに発する光である。

このチェレンコフ光は、現在では、宇宙から飛んでくる「ニュートリノ」の検出などにも使われている。その方法は、以下のとおり。

ニュートリノは、光とほぼ同じ速度で、真空中では秒速約30万Kmもある。光は水中では約3/4にまで減速するのに対して、ニュートリノのほうは水中でも速度を落とさない。だから、水中ではニュートリノは光よりも速くなる。

そのニュートリノが水の原子と衝突すると、ニュートリノのほうがエネルギーが大きいため、原子から陽子や電子が光速で叩き出されてしまうことになる。

そうした光速に近い荷電粒子が水中に現れると衝撃波が生じ、青白いチェレンコフ光が放たれる。そこで、このチェレンコフ光を検出することで、間接的にニュートリノの存在や、それが飛来してきた方角などが分かるというわけである。

★〔小柴博士の「ニュートリノ観測成功」も、チェレンコフ光から〕

岐阜県・神岡町の地下1000メートルにある、5万トンもの大量の水(超純水)を蓄えた「スーパーカミオカンデ」では、宇宙のはるか彼方から飛来するニュートリノが水中の分子に衝突するのを待っている。

運よく、ニュートリノが水中の分子(粒子)とぶつかって、チェレンコフ光を発した場合、その微弱な光を「光電子倍増管」が検出することになっている。

2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴博士が、超新星からのニュートリノを史上初めて観測することに成功したのも、チェレンコフ光を検出するための大掛かりな実験装置「カミオカンデ」があったからなのだ。

★〔「これだけは!」○×クイズ〕

次の設問に、「○か×か」で答えよ。

1.「原子炉から発せられる、青白い光は『チェレンコフ光』である」

2.「光は水中で約1/2にまで減速するのに対して、ニュートリノのほうは水中でも速度を落とさない」

3.「『チェレンコフ放射(効果)の発見』により、1958年にノーベル物理学賞を受賞した人物が、あのチャイコフスキーである」

答え:1.「○」、2.「×」、3.「×」

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