1926年9月19日愛媛県生まれ。51年東京大学理学部物理学科卒業。55年ロチェスター大学大学院終了。70年東京大学理学部教授。87年定年退官、東京大学名誉教授、東海大学理学部教授。2002年ノーベル物理学賞受賞。その他、85年ドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字賞受賞をはじめ、仁科記念賞、朝日賞、日本学士院賞、藤原賞、文化勲章、Wolf賞など。
【受賞理由となった業績や活動】
(超新星爆発からのニュートリノを見事にキャッチ!)
「ニュートリノ天文学」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
これは、これまでの光や電波を観測手段とする天文学とはちがって、新たに「ニュートリノ」という素粒子を観測手段とする天文学のことを指した言葉なのである。
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ところで、そのニュートリノ自体は、早くも1930年にはウォルフガング・パウリ(1945年のノーベル賞受賞者)によって、その存在が予測されていたのだが、存在の証明のほうは、それから数十年後まで待たなければならなかった。
このように、存在の証明がきわめて困難だったのは、ニュートリノが他の物質との間で、何らの相互作用も起こさないという性質をもつことから、検出しにくいという事情があったのだ。
ところが、1987年2月、小柴昌俊らのグループは、地球から遠く離れた宇宙で起こった超新星爆発によって飛び出たニュートリノを、みごと検出することに成功。それだけではなく、その後はこのニュートリノに質量があることなども明らかにしたのだった。
同時に、ニュートリノの精密な測定を可能にする実験装置なども開発し、こうして「ニュートリノ天文学」という、新しい観測手段と天文学、そして「素粒子・宇宙線物理学」など、新たな学問の道を切り開くに至ったのである。
この業績により、小柴昌俊(東京大学名誉教授)は2002年のノーベル物理学賞を受賞したのである。
〔高さ16メートルの水槽に純水3,000トンを満たした「カミオカンデ」〕
1987年2月23日、地球から16万光年の彼方にある「SN1987」と呼ばれる超新星からのニュートリノを検出。これが、世界で最初の「超新星爆発からのニュートリノ観測」となった。
このときの観測(検出)を可能にした実験装置が、「カミオカンデ」と名付けられた、巨大な検出装置なのである。これは、岐阜県神岡鉱山(神岡鉱山の地下1,000メートルに設けられた地下実験室内)に設置されている。
神岡鉱山の地下にある実験装置なので、その地名から「カミオカンデ」と命名されたわけだが、より詳しく言うと「Kamioka Nucleon Decay Experimet」の略でもある。(その後、「Kamioka Neutrino Detection Experimet」と改められた。)
また、観測装置そのものの名称は「大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置」というように、この装置には、直径15.6メートル、高さ16メートルの水槽に純水3,000トンが満たされており、それによって、水槽内でニュートリノ現象を観測できるようになっていた。
最も特徴的なのは、この水槽内の壁には、直径約50センチの「光電子増倍管」が、1平方メートルに1個の割合で配置され、それが全部で約1,000個も用意されていたことだ。
(数年前、この光電子増倍菅が、新型の水槽内で突如連鎖的に破裂するという事件が起こった)
〔ニュートリノが水中で「チェレンコフ光」を発する瞬間を検出〕
ニュートリノのような高速の荷電粒子は、水中に入ると「チェレンコフ光」と呼ばれる青白い光を発することが知られている。「光電子増倍管」は、そうしたチェレンコフ光を捕らえることが可能なので、これによってニュートリノの検出もできるというわけだ。
さらにその後、より大規模な観測装置である「スーパーカミオカンデ」も造られ、この後継装置によって、太陽ニュートリノや大気ニュートリノなどの観測にも成功したほか、前述したように、ニュートリノに質量があることなども明らかにしたのだ。
とくに、検出装置を通過した全1016個のニュートリノのうち、11個を捕獲したことが、ノーベル賞の受賞理由にも大きくつながった。
〔共同受賞者の研究業績は?〕
2002年のノーベル物理学賞は、宇宙粒子や宇宙線を通して、新しい天文学を切り開いた業績に対して贈られることとなった。 小柴と共同受賞したのは、レイモンド・デイヴィス(Raymond Davis Jr)とリカルド・ジャコーニ(Riccard Giacconi)だ。
前者は、30年間に太陽からのニュートリノを総数2,000個捕獲するのに成功し、その結果、核融合が太陽のエネルギー を供給していることを証明した。
後者は、特殊な装置により、われわれの住む太陽系の外からのX線源を初めて検出し、宇宙にはX線のバックグラウンド放射があることを初めて証明した。(「文部科学省ホームページ」参考)
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